映画批評

わたしのゴッドファーザー論 ~名作映画の宴~

ゴッドファーザーは言わずとしれた映画史に残る傑作である。

上映されて50年近く経つものの、いまなお、映画史の中でも燦然と輝きを放っている。

 

古今東西、さまざまな映画の名作があるが、

ゴッドファーザーが占める地位は特異なものがある。

50年近く前の作品ということもあり、さすがに映像の古さは否めないものの、

いまなおわたしたちの心に深く訴えかけてくるものがある。

 

誤解を恐れずに言えば、ゴッドファーザーは映画史における1つの到達点、

そう言っても過言ではないと思う。フランシス・フォード・コッポラが作り上げた、

類まれなる壮大な叙事詩は、当時まだ無名だった若手俳優たちの活躍によって

見事に花開いた。

 

アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュヴァルら出演者たちは、

ゴッドファーザーをきっかけにして、一気にスターダムの階段へとのし上がっていった。

ゴッドファーザーは1972年に公開されるやいなや、当時の興行記録を

次々と塗り替える大ヒットとなり、アカデミー賞最優秀作品賞など、

数多くの賞を受賞した。

 

静かな言葉の中にも、圧倒的な迫力を放つマーロン・ブランドや、

ボスへ成り上がっていくにつれ、目力がどんどん増していく

アル・パチーノの演技は、非常に高い評価を受けた。

 

パートⅠによって、コッポラの名前は一躍世界に轟かせた。

ゴッドファーザーが、もしこの1作だけで終わっていたとしても、

後世に残る名作として多大な影響を残していたに違いない。

だが、これはまだほんの序章に過ぎなかった。

コッポラの真骨頂はむしろここからだったと言ってもよい。

 

1974年には、続編であるゴッドファーザーパートⅡが公開される。

パートⅠのその後を描いていると同時に、ドン・コルレオーネの過去にさかのぼり、

過去と現在を行き来する複雑な時系列によって描かれた作品は、

これまた空前のヒットを記録する。

 

パラマウント映画は、ゴッドファーザーが公開される前からすでに

続編の製作を検討していた。しかし、コッポラは続編の監督には

興味ないと表明する。パラマウントはコッポラに対し、

製作に関するほぼすべての決定権と、事実上無制限の予算を約束し、

彼に監督をするように説得し、コッポラはようやく首を縦に振った。

 

こうして生み出されたパートⅡは、多くの批評家から絶賛を浴びた。

前作と同等かそれ以上の出来ばえとして、広く世界中からの熱い評価を受ける。

1974年のアカデミー賞は、作品賞を含む9部門にノミネートし、

最優秀作品賞など6部門を受賞した。

アカデミー賞の歴史の中で、シリーズのうち2作が受賞した作品は、

あとにも先にもゴッドファーザーをおいてほかにない。

3時間にも及ぶ長尺の作品は、あらゆる視点から見ても、

緻密に計算し尽くされており、もはや一寸の隙も無いほどに

完璧な仕上がりとなっている。

 

パートⅠではマーロン・ブランドが、貫禄あふれる演技を見せていたが、

パートⅡでは、若かりし頃の常に危険と隣り合わせの日々を、

ロバート・デ・ニーロが演じている。

幼少期、常にギリギリのところで生き延びていたのが、

数々の試練を乗り越えて、のちにあの貫禄へとつながっていく・・・。

パートⅡによって前作の言動の持つ意味が分かるというカタルシスもある。

物語はアル・パチーノとロバート・デ・ニーロが中心となって物語が進んでいく。

 

この時点で、すでにゴッドファーザーは映画史に名を刻んだと言っていい。

2作とも重厚かつ長大で、これほどまでに緊密に作られた作品は

それほどあるものではない。偉大なるゴッドファーザーは

これにて完結、そう思われていた。

 

だが、これで終わりではなかった。

1990年、実に16年もの歳月を経て、ゴッドファーザーが帰ってきた。

ゴッドファーザーパートⅢが公開されたのだ。

 

パートⅢはマイケル・コルレオーネの晩年を描き、懺悔と苦悩が中心の描写となった。

冷酷さや非情さはなくなり、ファミリーをいかに収束させていくか、

といったところに焦点が当てられた作品だった。

ゴッドファーザーの新作への期待もあり、本作もアカデミー賞7部門に

ノミネートされた。しかし結果は受賞には至らなかった。

 

ゴッドファーザーの過去の作品の評価が高すぎるあまり、

続編への期待値が大きかったことが予想される。

専門家の中には、低い評価を与える者もいた。

しかし、わたしは全くそう思わない。

1作目や2作目より劣っていることはない。

それらに負けず劣らず、極めて優れた作品である。

 

3作を通じて合計時間はおよそ9時間。これほどの長尺にも関わらず、

作品にはどれも隙がなく、全編において緊迫感に満ちている。

物語は静かに進んでいくが、突然の銃撃戦や謀反、裏切りなど、

激しい場面もときおり現れる。登場人物も非常に多く、

一度見ただけではすべてを把握することは不可能に近い。

『アウトレイジ』や『シティオブゴッド』が動きのある怖さであるとすれば、

『ゴッドファーザー』は静けさの中で起きる怖さである。

 

誰が生き残るのか?黒幕は誰なのか?ファミリーの行方は?

マフィアの抗争と家族を愛してやまないコルレオーネ一族の

栄光と悲哀が、そこに描かれている。

また、ゴッドファーザーを象徴する「愛のテーマ」がその感情に拍車をかける。

これほどまでに完璧に作られた作品は、それほどあるわけではない。

ゴッドファーザーは、あらゆる観点で見ても、至高の傑作である。

 

映画には古今東西さまざまな名作がある。

映画の歴史を紐解けば、歴史的名画と呼ばれるものは山のようにある。

『第三の男』『天井桟敷の人々』『風とともに去りぬ』『自転車泥棒』『市民ケーン』

これらはすべて、実験的な技法駆使したり、画期的な撮影技術を

取り入れたりなどして、映画の限界を超えてきた。

映像こそ古いものの、いま見ても普通に面白いものが多い。

恐ろしく熱のこもった作品で、一作に込める気合いを感じるのだ。

 

日本にも名作は数多い。『七人の侍』『東京物語』『浮雲』『仁義なき戦い』

『二十四の瞳』

黒澤明や小津安二郎、溝口健二など、ハリウッドからも敬愛される、

優れた映画監督の魂の結晶が、フィルムに刻まれている。

 

映画の歴史において、名作と呼ばれるものは山のように存在する。

そんな中、これまで見た映画で3本の指に入る素晴らしい映画はなにか?

と言われれば、わたしの答えはすでに決まっている。

『ウェストサイド物語』『アマデウス』『ゴッドファーザー』

これは誰になんと言われようとも、決して揺らぐことはない。

 

また、映画史に残る歴史的3部作はなにか、と言えば、

『ゴッドファーザー』と『バック・トゥー・ザ・フューチャー』の2作である

であるとわたしは確信している。

『ゴッドファーザー』はそのどちらにも入っているという意味において、

わたしにとって、唯一無二の作品なのである。

 

いまでも年に1度は、必ずゴッドファーザーを観る。

仕事に飽きて、休日にはどこにも出かけたくない。

何もすることがなくて、どうしていいか分からなくなるときが、

年に1回くらいは必ずある。そんなときにわたしは名作映画を見返している。

ゴッドファーザーはその1つである。

これまでに何回見たかは正直、覚えていない。

 

わたしの映画人生の中でも特異の地位を占めるもので、

いくつになっても見返したいと思う映画が、ゴッドファーザーなのである。

たった1本の映画なのに、なぜこれほどまでに惹きつけられるのか?

そして、このわたしの気持ちは、ほかの人の目にはどう映るのか?

わたしは文章を通じて、それを知ってみたいと思い、筆を取ることにした。

 

これがどれくらいの長さになるのか、いまの段階では全く分からない。

もはやゴッドファーザーはあらゆるところで語り尽くされており、

いまからわたしがとやかく言ったところで、何かが変わることはない。

すでに語り尽くされていることの焼き直しで終わるかもしれないし、

わたしのただの1人よがりの感想文、で終わってしまうかもしれない。

あるいは、その可能性は非常に高いだろう。

それでも、わたしはチャレンジしたいと思う。

なぜなら、わたしはこの映画に深く取り憑かれているからであり、

少しでも深く理解したいという、抑えきれない欲求があるからである。

そして何より、わたしはゴッドファーザーが好き、ということに尽きる。

 

これは、わたしのゴッドファーザーに対する、長年のリスペクトと

捉えてもらってもいい。これまでにさまざまな映画を見てきたけれど、

ここまでの衝動に駆られる映画はそれほど多くはない。

ゴッドファーザーに関しては、それをやっても決して無駄になることはない、

わたしはそう考えている。

また、自分の中で一度文字に起こしてみて、

少しでも頭を整理してみたい、という思いもある。

 

もしこのエッセイを読んで、もう一度ゴッドファーザーを見てみたい、

という人がいれば、わたしにとってこれ以上の喜びはない。

むかし一度見たきりで、細かいところはうろ覚えでしかない、という人は、

これを読んで思い出してほしいし、何度も見ている人は、

1人の視聴者としての感じ方を読み取って欲しい。

 

ゴッドファーザーは至高の人間ドラマがあり、多くのことが詰まっている。

このエッセイを読めば、ゴッドファーザーが追体験できる。

少し長くなるかもしれないが、わたしにできるやり方で、

この名作について、語ってみたい。

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