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【書評】『日本のマラソンはなぜダメになったのか』熱すぎるマラソン哲学!

この本には熱すぎるマラソン哲学が綴られている。

登場するのは全部で7人。

宗茂、瀬古利彦、中山竹通、児玉泰介、犬伏孝行、藤田敦史、高岡寿成。

いずれも各時代にマラソンで日本記録を持っていた、日本を代表するランナーである。

彼らがマラソンに向き合うに当たり、どんなことを考えていたのか、なぜそうした行動に至ったのか、いまのランナーに何が足りないのか、彼ら独自のマラソン哲学を余すことなく披露している。

その哲学はとても深遠で奥が深い。

努力や精神論も語られているが、それ以上にある種の執念を感じるのだ。

 

日本はマラソンが非常に盛んな国である。

全国各地にランナーがいて、週末になると必ずどこかでマラソン大会が行われている。

マラソンの日本代表は、毎回ものすごい注目を集める。

熾烈な戦いを繰り広げる選考レースは大きなニュースなり、日本陸連の決定が賛否を呼ぶ。

リオオリンピック全体を通じて、視聴率がもっとも良かったのは、男子のマラソンだった。

女子マラソンは3位。日本人のマラソン熱、興味は尽きることがない。

 

シドニーオリンピックで高橋尚子が金メダルを取ったとき、その偉業を大きく讃えた。

有森裕子しかり、野口みずきしかり、マラソンでメダルを取れば、この国ではヒーローとして扱われる。

ただ、日本代表のここ最近の成績は、あまり奮っていない。

世界との差はますます開いていて、上位に食い込むことすら難しい状況である。

ランナーの端くれとしては、とても残念に思う。

 

日本人が駅伝やマラソンが好きなのは、農耕民族だからではないだろうか?

昔からコツコツと励むことに価値を見い出す民族で、一歩ずつ前に向かって進んでいくマラソンと親和性があるのだと思う。

人生を、道とかマラソンなどに例える言葉があって、多くの人が格言として使う。

日本人のマインドに見事にフィットするのだ。

だからこそ、国を挙げて応援し、マラソンに哲学を見い出す。

マラソンが身近にあって、その精神性に共感するからこそ、多くの人を引きつけるのだと思う。

 

『日本のマラソンはなぜダメになったのか』は、とても熱い本である。

マラソンのレジェンドたちが世界と戦った経験から、いまの若い人たちに、ときには厳しく、ときには優しい口調で、叱咤激励をする。

世界の頂点を目指すためには、これくらいの覚悟を持ってやるべきだという、ある種の指針になる。

見る人によっては、古臭い根性論に映るかもしれない。

ただマラソンというのは、それほど過酷な競技であり、世界と戦うのはとてつもない競争に身をおくことなのだ。

日本のマラソンを牽引した者たちの言葉は、強い説得力がある。

少なくともわたしの心には強く響いたし、前を向いて進んで行こうと思えた。

 

本書は各々のマラソン哲学が語られているが、マラソンに限らず生き方や人生そのものを深く考えさせられる。

マラソンをする人だけでなく、挑戦する人や夢に向かって突き進んでいく人、すべての人への叱咤激励、エールを贈る本である。

マラソンを見るのが面白くなるし、自身も頑張っていこうと思える。

瀬古利彦さんの「マラソンは究極のアナログスポーツ」という言葉が印象的だった。

情熱の熱さは、ほかに類を見ないものがある。

とても良い本なので、興味のある人は是非とも手に取ってみて下さい。

 

日本のマラソンはなぜダメになったのか 日本記録を更新した7人の侍の声を聞け!

折山淑美著 文藝春秋

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