陸上

【ドーピング疑惑】女子100メートルジョイナー孤高の世界記録は?

時代を経るごとに、陸上競技の世界記録はどんどん更新されていく。

スパイクの性能や、競技場のウレタンの質の向上など、

環境が整ってきているので、それは当然のことである。

 

むかしは、土の上の走った記録が認定されていたし、

スターティングブロックさえもなかった。

与えられた環境の中で、最善を尽くして争っていたのだ。

昔の人が劣っているかと言うと、そんなことはない。

条件が違うので比べようがないというのが、実際のところである。

 

陸上競技にはいろんな種目の世界記録がある。

カリスマやスターによって打ち立てられたものもあれば、

もはや誰なのか分からない、といったものもある。

わたし個人として特に印象深いのは、マイケル・ジョンソンの世界記録である。

この記録は、今後絶対に破られることがないと、信じて疑わなかった。

マイケル・ジョンソンは、圧倒的なスターであり、唯一無二の存在、

これを超える人なんて、現れるはずがないと思っていた。

ところが、200メートルはウサイン・ボルトに、

400メートルはバンニーキルクに、それぞれタイムを更新されてしまった。

特に400メートルは、99年のセビリアの世界陸上でマークし、

向こう100年は破られることはない不滅の大記録と言われていた。

わたしはテレビにかじりついて、その様子を見ていたものである。

あのマイケル・ジョンソンでさえも、いつか更新されてしまう・・・。

陸上競技のファンとしては、少し寂しさを覚えてしまったりもする。

 

一方で陸上競技には、ずっと破られていない世界記録がある。

とりわけ古いものを下記にリストアップしてみた。

 

女子100メートル フローレンス・ジョイナー(アメリカ) 10秒49 88年

女子200メートル フローレンス・ジョイナー(アメリカ) 21秒34 88年

女子400メートル マリタ・コッホ(東ドイツ)      47秒60 85年

女子800メートル ヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロバキア)

1分53秒28 83年

 

これらはすべて30年以上も前の記録である。

すべて80年代に集中している。

他の種目もいろいろとあるが、とりわけ女子のトラック種目が目を引く。

これらについて、何か原因があるのだろうか?

わたしは専門家ではないので、詳しいことはよく分からない。

とりわけ大きな輝きを放っているのは、100メートルと

200メートルのジョイナーの世界記録である。

 

ジョイナーの記録はあまりに突出し過ぎている。

ジョイナーにもっとも近づいた人の1人として、

アメリカのマリオン・ジョーンズ選手がいる。

98年に100メートルで10秒65を出したときは、ものすごく騒がれた。

だがその後、ドーピングが発覚して、表舞台から姿を消した。

98年の記録はドーピング前として、正式に残っているものの、

それでもジョイナーの記録にはあまりにも遠い。

 

それ以降も、わたしは長らく世界陸上を見ているが、

女子100メートルの決勝は、11秒を切るか切らないか、

くらいの記録に留まっている。

多くの選手がより良い記録を目指して、励んできた。

いろんな条件が整ってきて、本来であれば記録はどんどん更新していくはずなのに、

女子100メートルの世界記録は、ずっと時が止まったままとなっている。

ジョイナーの記録はあまりに遠すぎて、誰も近づくことさえもできないのだ。

本来であれば、孤高の世界記録として称賛を集めるのかもしれない。

ただ、ジョイナーの記録に関して、手放しに称賛している人はあまりいない。

フローレンス・ジョイナーは、常にドーピング疑惑をかけられてきた。

 

彼女は、あるときを境に急に体つきが変わっていったり、

ものすごく低い声になったり、ドーピングをした際に起きる症状に

似たことが、ジョイナーの身に度々起きていた。

ジョイナーはドーピング疑惑にさらされ、実際に何度も検査にかけられた。

しかし、その判定はすべて白だった。

常にドーピングの疑惑をかけられながらも、

彼女は29歳に引退し、38歳という若さでなくなった。

死因は心筋梗塞だった。ドーピングの副作用によって発生したのではないか、

とも言われている。

多くの謎を残しながら、ジョイナーはこの世を去った。

いまや真相は誰にも分からない。

 

他の競技はまったく記録は更新されていないのだろうか?

競泳に目を移してみると、すべての世界記録が

2000年以降に出されている。

 

94年にバルセロナオリンピックで金メダルを獲得した岩崎恭子のタイムは、

200メートルの平泳ぎで2分26秒65だった。

これは当時のオリンピック新記録である。

一方で現在の世界記録はデンマークのリッケ・ペテルセンが

13年の世界選手権マークした2分19秒11である(19年5月時点)

7秒近くも縮めていることになる。

 

競泳の世界記録は、すべて2000年代に入ってからである。

競泳は順調に記録を伸ばしているのに、陸上競技は全然伸びていない。

なぜ陸上競技は記録を更新することができないのだろうか?

 

よく言われているのは、80年代はドーピングの検査がまだ緩く、

いまでは引っかかるようなものでも、当時は許されていた、する議論がある。

ドーピング検査をうまくすり抜けた人たちの記録が、

いまだに数多く残っているという説である。

東ドイツなどでは、ドーピングが国家ぐるみで当たり前のように

行われていた、といったレポートなどもある。

以下の「ナンバー」の記事は大変面白い。

 

ナンバーの記事はこちら

 

ドーピングは、あらゆるスポーツに及んでいると思われるが、

とりわけ陸上競技の世界が、もっとも言及されることが多い。

ドーピングがあったか否かについては定かではないけれど、

80年代の記録をいまだに越えられないというのは、

どう考えても不自然である。

これほどスポーツを取り巻く環境が劇的に進化を遂げているのに、

30年以上も世界記録が更新されないというのは、普通に考えておかしい。

なんらかのことがあったと考えた方が自然である。

 

これらの世界記録について、いったん白紙にするといった議論もある。

とてもむずかしい議論である。陸上競技をしてきたものにとって、

すごく複雑な思いだけどルールはきちんとしなければならない。

 

ドーピングの取り締まりは、端から見ても少し度が過ぎているように

感じていたけれど、それくらい厳格化しなければ、

ルールを逸脱する者が出てきてしまうのだろう。

 

陸上競技を楽しく観たいと思う者にとって、いろいろと複雑な心境になる。

ジョイナーの世界記録のことを見る度に、そんなことを考えたりする。

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