映画批評

【アカデミー賞】中野量太監督の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が良い!

ここ最近、家族をテーマにした映画を見ることが多い。

どの映画を見ても非常に考えさせられる秀作ばかりである。

『そして父になる』『万引き家族』『鈴木家の嘘』などを見た。

いずれの作品も大変素晴らしい。

 

家族だからこそ分かり合えないこと、家族しかなし得ないこと、

人の数だけさまざまな家族像がある。

家族の秘密をひも解くのは、結構辛い作業だ。

良質な家族映画を見ると、考えさせられることが非常に多い。

熱い気持ちになる。

 

さて今回は、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』である。

とても静かな映画である。

ものすごくざっくり言うと、余命数ヶ月と宣告されたヒロインが、

やり残したことを果たすために、次々と行動に移していき、

次第に隠された過去が明らかになっていく。

 

この映画を一言で言い表せば「母の偉大さ」である。

宮沢りえ演じる双葉のたくましさが、際立っている。

その代わり、男たちはみんな頼りない。

オダギリジョーはダメ男だし、松坂桃李もいい加減なヒッピー役である。

 

もう少し男性がしっかりとすれば、こんなに苦労をせずに済むと思う。

だが、双葉は決して彼らを責めることはない。

娘には、ちゃんと生き抜いていけるように厳しく叱責する。

娘に学校へ行くように責め立てるシーンは、やり過ぎとも思えるほどだ。

結果的には、娘がきちんと立ち向かって勝ち得たから良かった。

ストイックな部分と、ちょっとやり過ぎなのではないかという部分が同居している。

世の中にはこういった女性って、きっといるのだろう。

 

余命宣告は、非常につらいものだったに違いない。

それでもしっかりと前を向いて、やるべきことを1つずつ実行していく。

自分の死を予感しながら、冷静に判断して行動する力はとてもすごい。

 

そんな中でも、食卓を囲むしゃぶしゃぶのシーンや、

巨大なタカアシガニを頬張るシーンなど、

ホッとする場面がときおり差し込まれる。

家族で食事をするシーンが随所に盛り込まれていて、ホッと和むのだ。

 

最初わたしは、余命宣告をうえた闘病物語、のようなありがちな

物語を想像していた。しかしそれはいい意味で次々と裏切られていく。

この作品は脚本がとても緻密に作られている。

何気ない描写にも含みを持たせていて、あとから分かることがたくさんある。

一度のみならず、何度も鑑賞することのできる映画なのだ。

 

個人的には、双葉がエジプトに行きたいと言っていたものの、

結局は叶わなかったが、父のかずひろの発案で、組体操で

ピラミッドを作るシーンがあった。あの場面は、とても

こころが和んだシーンである。

 

車の中で、ある事実が伝えられるシーン。

宮沢りえと杉咲花の渾身の演技は、この映画の最大の見どころである。

緊張感とまぶた1つ動かさない名演技は、アカデミー賞も納得の

素晴らしい演技だった。

 

本作は、宮沢りえと杉咲花が、それぞれ主演女優賞と助演女優賞を

受賞した。素晴らしいことである。

 

この映画が公開された2016年は、『君の名は』や『シン・ゴジラ』などが、

興行収入がすごくて目立っていて、本作には全然気づかなかった。

ひょんなことからこの映画にめぐり合い、

とても素晴らしいものを鑑賞させてもらった。

中野監督は今後も映画を観ていきたいと思う。

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