映画批評

【傑作】『寝ても覚めても』は素晴らしい映画だけど関西弁が不自然!

18年のカンヌ映画祭で、『万引き家族』が最高賞の

パルムドールを受賞して大変話題となった。

是枝監督の作品は『誰も知らない』や『空気人形』

『そして父になる』など、素晴らしい作品がたくさんあって、

わたしは新作が出るたびに楽しみにしている。『万引き家族』も

公開直後にすぐに観に行った。前評判どおり素晴らしい作品だった。

 

カンヌ映画祭のコンペティション部門で、『万引き家族』とは別に

日本からもう1作出品されていた。濱口竜介監督の『寝ても覚めても』である。

この作品の出来が非常に良くて、ある映画関係の人たちの間では、

こちらがパルムドールを取るのではないか?と囁かれていた。

結果的に受賞を逃してしまったけれど、わたしはずっとこの作品が気になっていた。

秋頃に公開されて、すぐに京都の映画館に観に行った。

これがとてつもない作品だったので、ここで紹介をしたいと思う。

 

身も蓋もないことを言ってしまえば、ヒロインはかなりイタい女である。

街ですれ違った人に勝手について行くし、勝手に抜け出してどこかに行ってしまうし、

一体何を考えているのか分からないし、行動は不可解なものが多い。

普通なら勝手にやってくれ~、と投げ出してしまうところである。

わたしがその立場にいれば、絶対にそう思う。

 

でも、なぜか放っておくことができない。

気がつけば見ているわたしも、彼女にどんどん惹かれていることに気付く。

 

唐田えりかという女優のキャスティングが、ものすごくマッチしているのだ。

わたしは唐田えりかという女優を全然知らなくて、あとからいろいろと調べた。

有村架純の後輩で、これから活躍が期待される若手女優とのこと。

 

バラエティ番組に出ている様子とかを見たけど、

いまどきのかわいらしい女の子、という印象だった。

ものすごく演技力があるとか、何かが突出しているとか、

そういう感じではなかった。雰囲気のいい、かわいらしい女の子、という

感じである。あるいは、これから有村架純のように活躍していくのかもしれない。

 

そんな女の子が、映画の中では男を振り回し続けている・・・。

そして、そんな彼女がものすごく魅力的に映るのだ。フィルムの魔力である。

 

カテゴライズすれば、恋愛映画ということになると思う。

でも、この映画はただの恋愛映画ではない。

全体を覆っている不穏な空気が、どこか怖さすら感じてしまう。

ひとクセもふたクセもあって、普通ではないのだ。

これを演出できる監督は、やはりただ者ではないと思う。

 

文学作品を映画化すると、どこか堅くて文学臭さが

抜けていないものがたびたび見受けられる。

この小説を読んだことがないので、原作に比べてどうなのかは分からない。

だがこの作品は、いわゆる純文学を映画化したものの中では、

かなり出色の出来なのではないか?ものすごくいい映画だと思う。

 

賛否は分かれると思う。彼女の行動が全然分からないし、気持ち悪いからイヤ、

という人もいると思うし、ものすごく分かる、と共感できる人もいると思う。

わたしは彼女の行動が全然分からなかったけど、もしかしたらあり得るかもしれない、

と思うところもあって、この不穏な空気がすごくクセになる。

監督の手腕だと思う。

 

ちなみにこの映画の魅力(?)として、関西弁がある。

この映画で出てくる関西弁は、相当おかしなものが次々と出てくる。

ネイティブの関西人がサラッと言う関西弁ではない。

関東人が無理やり関西弁で演技したような、ぎこちない話し口調が続いていく。

 

あれは演出なのだろうか?それともあれしかできなかったのか?

聞いていて、関西人の自分としてはどうしてもツッコミを入れたくなる。

実際のところはよく分からない。

 

濱口竜介監督は、これよりも前に『ハッピーアワー』という

5時間を超える超長尺の映画を撮っている。

これがまた大変素晴らしい作品なのだけど、この話はまた別の機会にしたいと思う。

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