映画

映画『寝ても覚めても』と関西弁

昨日は映画の話をしたが、引き続き映画の話・・・。

 

昨年、カンヌ映画祭で『万引き家族』が最高賞のパルムドールを受賞して、

話題になった。是枝監督の作品は『誰も知らない』や『空気人形』

『そして父になる』など、素晴らしい作品がたくさんあって、

新作が出るたびに楽しみにしている。

『万引き家族』も、前評判どおり素晴らしい作品だった。

 

カンヌが発表される前に、コンペティション部門で、日本からもう1作出品されていた。

濱口竜介監督の『寝ても冷めても』である。ある映画関係の人たちの間では、

こちらがパルムドールを取るのではないか?と囁かれていた。

 

結果的には受賞を逃したけど、この作品がずっと気になっていて、

公開されるとすぐに、京都の映画館に観に行った。これがとても面白かった。

 

身も蓋もないことを言ってしまえば、ヒロインはかなりイタい女である。

街ですれ違った人に勝手について行くし、勝手に抜け出してどこかに行ってしまうし、

一体何を考えているのか分からないし、行動は不可解なものが多い。

普通なら勝手にやってくれ~、と投げ出してしまうところである。

自分がその立場にいれば、絶対にそう思う。

 

でも、なぜか放っておけないのだ。

気がつけば見ているわたしも、どんどん彼女に惹かれていることに気付く。

 

唐田えりかという女優のキャスティングが、ものすごくマッチしているのだ。

わたしは唐田えりかという女優を全然知らなくて、あとからいろいろと調べた。

有村架純の後輩で、これから活躍が期待される若手女優とのこと。

 

バラエティ番組に出ている様子とかを見たけど、

いまどきのかわいらしい女の子、という印象だった。

ものすごく演技力があるとか、何かが突出しているとか、

そういう感じではなかった。雰囲気のいい、かわいらしい女の子、という

感じである。あるいは、これから有村架純のように活躍していくのかもしれない。

 

そんな女の子が、映画の中では男を振り回し続けている・・・。

そして、そんな彼女がものすごく魅力的に映るのだ。フィルムの魔力である。

 

カテゴライズすれば、恋愛映画ということになると思う。

でも、この映画はただの恋愛映画ではない。

全体を覆っている不穏な空気が、どこか怖さすら感じてしまう。

ひとクセもふたクセもあって、普通ではないのだ。

これを演出できる監督は、やはりただ者ではないと思う。

 

文学作品を映画化すると、どこか堅くて文学臭さが抜けていないものが

たびたび見受けられる。

この小説を読んだことがないので原作に比べてどうなのか、は分からない。

だがこの作品は、いわゆる純文学を映画化したものの中では、

かなり出色の出来なのではないか?ものすごくいい映画だと思う。

 

賛否は分かれると思う。彼女の行動が全然分からないし、気持ち悪いからイヤ、

という人もいると思うし、ものすごく分かる、と共感できる人もいると思う。

わたしは彼女の行動が全然分からなかったけど、もしかしたらあり得るかもしれない、

と思うところもあって、この不穏な空気がすごくクセになる。

監督の手腕だと思う。

 

ちなみにこの映画の魅力(?)として、関西弁がある。

この映画で出てくる関西弁は、相当おかしなものが次々と出てくる。

ネイティブの関西人がサラッと言う関西弁ではない。

関東人が無理やり関西弁で演技したような、ぎこちない話し口調が続いていく。

 

あれは演出なのだろうか?それともあれしかできなかったのか?

聞いていて、関西人の自分としてはどうしてもツッコミを入れたくなる。

実際のところはよく分からない。

 

濱口竜介監督は、これよりも前に『ハッピーアワー』という

5時間を超える超長尺の映画を撮っている。これがまたものすごくいいのだけど、

この話はまたの機会にしたい。