カルチャー

仕事を辞めた経緯と百貨店業界の行方

わたしは前職で百貨店に勤めていた。

百貨店はもう何十年にも渡って右肩下がりが続いていて、

売上減に歯止めがかかっていない。

90年代は百貨店の市場規模はおよそ9兆円だった。

いまは6兆を割り込んで、5兆円台に突入している。

 

人員削減や閉店など、例年どこかで必ずニュースになる。

若い人なんて全然いない。客の大半が60歳以上の年輩の人である。

わたしはここで11年勤めていた。

 

仕事がつまらなかったかというと、決してそんなことはない。

仕事を通じていろいろと知らない世界を知ることができたし、

それまでまったく興味がなかった、モノに関心が向くようになった。

 

自分がやりたい仕事ではなかったとか、

どこか別のところに就職しておけば良かったとか、

百貨店という選択に対する後悔の気持ちは一切ない。

 

入社した当初は、接客もろくにできなければ、

電話でやりとりすることさえもままならなかった。

包装もぜんぜんできなかった。

百貨店に勤めている人間が、包装ができないのは致命傷である。

 

いろんな人に迷惑をかけながらも、少しずつできるようになっていった。

仕事を通じて社会性を身につけて、集団のなかで適応していった。

いろんな領域の担当もして、商品知識もたくさん身につけた。

会社にいなければできないようなことはたくさんあった。

 

もちろん、良いことばかりではない。

背筋が凍るような、恐ろしいクレームを経験したこともあるし、

発注を見誤って、とんでもない量の商品を余らせてしまったこともある。

理不尽な上司に怒鳴り散らされて、ひどく落ち込んだことも一度や二度ではない。

それでも、わたしは仕事を続けていった。

 

10年経ったときに、仕事を辞めようと思った。

この先どんなことが待っているのか、さほど考えなくてもだいたいの予想はつく。

出世しても、大変なことに変わりはない。

それに、百貨店自体が存続の危機に陥っている可能性もある。

 

百貨店は今後も縮小を避けることはできないだろう。

特に地方店を中心に今後ますます閉店が続いていく。

ネットではアマゾン、リアルではイオンに押されて、

百貨店そのものの存在意義が問われつつある。

そのためには、なにか新しいことをして変わらなければならないけれど、

残念ながらその気配を感じることはない。

 

わたしは、客の立場で応援していきたいと思うけれど、

おそらくこの流れに抗うことはできないだろう。

寂しいけれど、これは現実なのだから仕方がない。

 

いつか落ち着いたら、いろんな百貨店をめぐって回りたいと思う。

わたしは辞めたあとも、百貨店を心から応援している。